私は所謂『見える人』だ。 といっても『見える』『会話する』ぐらいで、他に特別な事が出来るわけではない。 例えば、分かり易く事故現場にボケっと突っ立つ、どことなく色の薄い青年。 私と目が合うと照れくさそうに目を逸らす。 20余年こんな自分と付き合っていて、生きている人間と同じくらいの“何か”に引き留められている色の薄い(元)人を見てきたが、彼らがこちらに害を加えようとした事はほとんど無い。 ある人は何かを考えこんでいるような。 またある人は虚空を睨むように、その場に留まっている。 自由自在に移動しているよう... 続きを読む
手鏡
実家が葬儀用具の卸売をやってた。 親父が確か4代目だか3代目。 俺は長男で跡継ぎだったんだけど経営が傾いていたことと、俺自身そんなに継ぐつもりもなかったので親父が脳溢血で死にかけたのを機に会社を畳んだんだ。 寺とか神社とか、葬儀会社とかの直接な仕事じゃないとはいえ、やっぱり人の死で稼ぐ商売、心霊的な話はチラホラ親父から聞かされてきたし、たまーに俺も体験することがあったんだけど。 その中で一番ヤバイ話。 会社を畳むことが決まって、家族で色々と片づけてた時だ。 事務所は親父の生家(随分前から住んではいないけど... 続きを読む
自殺サイト
今から10年前。 自分は19歳フリーターでガソリンスタンドの夜勤バイトへ原付で向かう途中、ウィンカー無しで右折してきた軽自動車と正面衝突してフロントガラスに顔面強打しながらふっとばされて重傷を負ったんだ。 大腿骨骨折で2ヶ月半ほど入院して、右足の中には宇宙にいくという金属の棒を入れられて退院した。 もちろんバイトは辞めることになったし、右足の筋肉は牽引で全部無くなったし、一年後には金属を抜く手術もあるしでニート街道まっしぐらだった。 車にはねられた直後に思った『今死んだら誰にもお別れすらできないし、明日に... 続きを読む
住宅地図にない家
仕事場行くのに便利な山道があって、そこをバイクで通っていた時の話だ。 山道の途中に小さな集落があって、しばらく行くとコンモリとした丘上になった山があった。 何気に山道からその丘を見上げてみると、ウッソウとした木々の間から何か建物が見えた。 丘の頂上付近にボロボロの民家らしきものがありそなので、一度どうなってるか見にいった。 その山をグルリと360度回ってみたが、そこへ繋がる道、獣道すら無かった。 俺は竹が生い茂る山の斜面を登っていった。 民家らしきものには生活感があった。 新聞がひもで縛って置いてあって、... 続きを読む
離島の風習
実家が離島なんだけどね。 島の中で、大きく分けると部落が二つあんの。まあ、農村と漁村って感じ。 私は農村の方の出身で、漁村の方のしきたりとかあんまり知らないのよ。 (農村は農村で、正月は女は外に出ちゃいけないとか色々あんの) で、漁村出身の友達に聞いた怖い話。 何年かに一度、島の巫女を決めるらしいんだけど、婆さん達がウタキ(神社みたいなとこ)に篭って神様から色々意見を聞いて、ランダムに島の女性の中から選ぶ。 そして一度でも選ばれると、一生島から出られないらしい。 そんな恐ろしいところに18年も住んでいたの... 続きを読む
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