【コラム】人皮装丁本の世界。世界の人皮装丁本10選

怪談でもたまに登場する「表紙が人の皮で作られた本」
私の中でこの手の本といえばミスカトニック大学が所蔵している「ルルイエ異本」ですが、これは残念ながらクトゥルフ神話小説のお話なので当然架空の本です。クトゥルフものなら天下の魔導書「ネクロノミコン」、ネット上ではちらほらネクロノミコンといえば人の皮の本と言われてますが、こちらは原文ソースでは人皮装丁本という下りはなかったと記憶しています。死霊のはらわたに出てくる死者の書=ネクロノミコンが人皮装丁のため、混同されている方がいるのではないかと思います。

こういう人の皮で装丁した本を人皮装丁本というのですが、この手の本は実在していて、発見されると当然のごとくニュースになります。
852 RARE: Old Books, New Technologies, and “The Human Skin Book” at HLS

ちょうど私の本棚にも……あるわけないですが、代わりに「世界の奇書101」という本を紹介します。
この本は、すっかり普及したコンビニ本棚のオカルトコーナーに転がってるタイプの本ではなく、大学教授や研究者らが執筆してるなかなかガチな本なので、硬い文体を我慢できれば本好きオカルト好きなら楽しめるはずです。
目次を見てもらえれば、どういう本なのかは一目瞭然で、

巻頭図版 地獄絵巻
神話学
ヘシオドス 神統記
プルタルコス イシスとオリシス
アニのパピルス 死者の書
バビロニア神話 エヌマ・エリシュ
※略
聖書学
旧約偽典 死海写本
旧約外典 ダニエル書補遺
新約外典 パウロの黙示録
新約外典 ニコデモ福音書
※略
オカルチズム・予言学
ニコラ・フラメル 象形寓意図の書
アンドレーエ 化学の結婚
レヴィ 高等魔術の教義と儀式
※略
悪魔学
ニコラ・ジャッキエ 鬼神論
アルフォンスス・デ・スピナ 信仰の砦
ヨハネ・ニーデル 蟻塚
シュプレンゲル・クラーメル 魔女への鉄槌
※略
性文学
アリストパネス 女の平和
オウディウス アルス・アマートーリア
オウディウス 変形譚
ペッカデルリ 西洋古典好色文学入門
※略
怪奇幻想学
カゾット 悪魔の恋
ユイスマンス 彼方
マイリンク ゴーレム
ホフマン 悪魔の霊薬
※略
稀覯本物語

世界の奇書101冊

という中二病感満載です。
人皮装丁本については、この奇書を扱った本の中でも一番最後、稀覯本(レア本)のベタ記事として書かれています。

だが下手装本の最たるものは人皮装丁本であろう。世界には少なくとも百冊以上はあるだろうといわれる。フランスに帰化した故藤田嗣治画伯も一部所有していた。1711年マドリード刊の宗教書で、戦前画伯が南米に遊んだ折、エクアドル大統領の息子から送られたものだという。

世界の奇書101冊

これを読む限り、どうも人皮装丁本はどこかの時代のどこかの地域でブームになった、というものではなく、あくまでかなりの物好きが個人的に制作する感じのようです。
あたりまえっちゃ、あたりまえですが。
こんなのが巷の本屋で平積みされてる世界とか嫌すぎですよね。
世界での発見例も100件程度、それぞれが1品ものですから、まさしく稀覯本です。

画家の藤田嗣治氏が所有していた人皮装丁本は「奇本・珍本・本の虫」という本でも紹介されていて、この本の冒頭に写真が載っています。

フランスに帰化して話題を投げた猫の絵で有名な藤田嗣治画伯が、かつて南米訪問中、エクアドルの大統領の令息から送られた書物は人間の皮で装丁されてたもので、筆者もしばしば手にとってみたが、別に、そのため、嫌な感じは少しも持たなかった。

奇本・珍本・本の虫/庄司浅水 著(学風書院刊)

他に所有している人の話は、分かりませんでした。
ただ、皮膚自体の収集では日本医科大学教授の福士勝成氏の名前がありました。
元々は彼の父である福士政一氏の病理学実験が始まりで、刺青の色素移動と病原体の移動の類似性について研究していて、それが刺青を集める始まりだったようです。
福士政一氏、福士勝成氏の両氏が、彫り物を入れている人が死んだら、遺族の許可のもと皮を剥ぎ取って研究をしているということです。
皮をはいで保存する過程については「死体の文化史/下川耿史」を読んでみて下さい。
ちょっと気持ち悪すぎるのでここには書きません。

人皮装丁本10選

日本ではあまり情報がありませんでしたが、海外ではしっかりと保管されているものがあり、TOPTENZという海外のサイトで人皮装丁本10選みたいな感じで紹介されています。
Top 10 Books Wrapped in Human Skin – Toptenz.net
残念ながら日本で他に紹介しているところが無いので、サイトを参考に説明しますが英語の分かる方は原文を見たほうが良いかと思います。

1. El Viaje Largo by Tere Medina(1972)
長い旅

ペンシルベニア州のスリッパリーロック大学のベイリー図書館にスペイン語でEl Viaje Largo(長い旅)と題されたエロティックな書かれた詩集がある。
プエルトリコのマヤグエス地域にいたアグアディヤ部族の、死亡した部族の皮を利用していたと思われる。
最初のページの中には、以下がスペイン語と英語の両方で書かれている。:
「この本の表紙は人間の皮の革から作られている」
“Mayaguez Plateau地域のAguadilla部族は、死亡した部族のメンバーの胴の表皮層を保存している。
大部分はAguadillas部族の皮によって実用的な使用として用いられ、商業貿易の市場には小規模だが着実な需要があった。このカバーはその需要を代表するものだ。

2. Terres du Ciel(1882)
空の中の地 or 天と地

世界の奇書101に記載がありますので、こちら引用します。

人皮装丁本で最も有名なのは、フランスの天文学者で詩人として知られるカミル・フラムマリオン博士の詩集『空の中の地』の一冊で、博士の死を愛し、若くして世を去ったある伯爵夫人(サン・トウジ伯夫人といわれる)の遺言により、婦人の肩の皮で装丁したもの。その本の表紙にはフランス語で「ある婦人の心からの願いを容れ、その人の皮で装丁す、1882年」と麗々しく金文字で打ち出されてある。
同書は長く博士の手元にあったが、博士夫婦の没後アメリカのある愛書家のところに秘蔵されることになった。

世界の奇書101冊

3. The Poetical Works of John Milton(1852)
ジョン・ミルトンの詩的な作品

妻のグレースを毒殺したジョージカドモアが絞首刑にされ、その後エセクターの病院にて解剖された。
その際、彼の皮膚の一部が本屋のW.クリフォードの手に渡り、最終的にジョン・ミルトンの詩集のカバーに使われた。この本は現在エクセターのWestcountry Libraryに所蔵されている。

4. Narrative of the Life of James Allen, alias Jonas Pierce, alias James H. York, alias Burley Grove, the Highwayman, Being His Death-bed Confession to the Warden of the Massachusetts State Prison(1837)
マサチューセッツ州刑務所の看守に死のベッド告白をしているジェイムズ・アレン、
エイリアス・ジョナス・ピアス、エイリアス・ジェイムス・H・ヨーク、エイリアン・バーレイ・グローブ、ハイウェイマンの生涯の物語

ジェームス・アレンは、19世紀初頭のマサチューセッツ州の強盗犯だったが、ジョンA.フェノという男を襲った際に失敗し刑務所に収容された。
彼は死に迫って、刑務所長から転記された彼の回想録のコピーを彼の皮膚で装丁し、それをフェノに与えるように要求した。
表紙には「Hic Liber Waltonis Cute Compactus Est(この本はアレン自身の皮膚で装丁されています)」と書かれている。
この本はフェノの個人図書になっていたが、彼の子孫によりボストン・アンテアヌムに寄贈された。
James Allen (highwayman) – Wikipedia

5. Red Barn Murder Judicial Proceedings
レッドバーン殺人訴訟手続(1828)

レッドバーン殺人事件は、1827年にイギリスのサフォーク州のポールステッドで起こった有名な殺人事件だ。
マリア・マーティンという若い女性が、地元の悪者ウィリアム・コーダーの子供を婚姻外に抱き、教区幹部から迫害。2人は地元のレッドバーンで出会い、逃げ出した。しかしコーデルはマーティンを撃ち殺した。
彼女の義母が、彼女が殺害され赤い納屋に埋葬されたという夢を度々見るようになり、父親が掘り起こしマーティンの遺体が発見されたことで事件は発覚した。

コーダーが処刑された後、解剖され医療専門家によって献体された。
彼の骨格は西サフォーク病院に移され、彼の肌はGeorge Creedという名前の外科医によってなめされた。
「この本の装丁は、彼の体から取り去られた殺人者ウィリアムコーダーの皮であり、1828年になめされた。サフォーク病院ジョージ教義外科医」

現在モイーズのホール美術館に保管されている。

6. Samuel Johnson’s Dictionary(1808)
サミュエル・ジョンソンの辞書

サミュエル・ジョンソンは、英語の最も重要な作家および辞書編纂者の一人だった。
英語の辞典は、彼の最大の作品の1つと広く考えられている。
最初に1755年に出版されたサミュエル・ジョンソンの辞書は、40,000語の言葉をリストしており、歴史上その時点までにその種類の中で最も広範な著作物となっています。
1818年、ジェームス・ジョンソンという犯罪者がノーリッチで絞首刑になった。
彼の肌はサミュエル・ジョンソンの辞書のコピーを製本するために使用された。
2人の男性の間には既知の関係はない。

7. Virgil’s Georgics
ヴェルギリウスの農事詩

ジャック・ドリルは有名なフランスの詩人でもあり、翻訳にも優れていた。
彼の最も有名な作品の1つは、ヴェルギリウスの農事詩の翻訳だ。
ドリルが死んだとき、誰かが彼の皮膚の一部を盗んだ。
その後、盗まれた皮膚はヴェルギリウスの農事詩の翻訳を装丁するために使用された。

8. Leeds, England Ledger(1700)
リーズ、イングランド元帳

2006年、英国リーズのダウンタウンで強盗事件が起き、それによって偶然300年前の元帳が発見された。
この元帳についてはあまり知られていない。
しかしフランス語で書かれており、1700年代にさかのぼるところに浪漫がある。
この元帳がフランス革命の時代に作られ、その当時、人皮装丁本の技術が人気だったかもしれないことを示唆しているからだ。

9. Practicarum Quaestionum Circa Leges Regias Hispaniae
スペイン王の法律についての実践的な質問(1632)

ハーバード大学のラングデル法学図書館にある稀覯本コレクションには何世紀も前の書物がある。
この本はPracticalum Quaestionum Lega Regias Hispaniaeというタイトルだ。
テキストはスペインの法律だ。
「この本の装丁はWavuma族によって、1632年8月4日に生きたまま皮膚をはがされた、私の親友Jonas Wrightが残したものである。この本はMbesa王が私に下さったもので、これは貧しかったJonasの持ち物の中でも意義のあるものであった。Jonasの皮膚は本を装丁するのに充分であった。冥福を祈る」
Wavumaは現代のジンバブエにいたアフリカの人々であると考えられている。

10. A True and Perfect Relation of the Whole Proceedings Against the Late Most Barbarous Traitors, Garnet A Jesuit and His Confederates(1606)

1605年にイングランドで起こった火薬陰謀事件の裁判に関する本と思われます。
火薬陰謀事件 – Wikipedia

本のカバーは、この事件の首謀者と疑われたヘンリー・ガーネット神父の物のようです。
ニコラス・オーウェン (イエズス会士) – Wikipedia

こうしてみると、人皮装丁本に使われる皮膚は大別して2種類に分かれそうですね。
一つは犯罪者の皮膚、もう一つは近親者の皮膚。
犯罪者の皮膚は犯罪に関係する書物に利用され戒め的な意味があるのかもしれません。
近親者の場合は、自分の愛する人の一部を死んだ後も身近に持っておきたいという気持ちからなんでしょうね。
ただの趣味悪い本、というものばかりではないんですね。

現時点で日本国内では人皮装丁本の所有者はいなさそうです。
怪談界隈でこの手の本が語られることがありますが、なぜかすぐに処分する流れになっちゃうので、ぜひお持ちの人は処分される前にお近くの大学図書館などに相談して世紀の大発見になって欲しいものです。

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