父から聞いた漁村の話です。 戦争中、紀元二千六百年記念行事の際に、漁村の神社を新しくするという事業が行われたそうです。 そのために、神社の宝物殿のものを他の場所に移す作業が必要になりました。 たくさんの人間がそれに関わるというのは、なにかと都合が悪い(盗まれたりする)というので、村の若者(当時は子沢山だった)のなかから三名の二十歳まえの男が選ばれたそうです。 そのうちの一人から父が聞いた話なのですが、宝物を移動させるのですが、それほど多くなく、1つ、古い木箱(船の荷造りのために作るような箱)が特に重要だと... 続きを読む
雛人形
さて、今年のお雛祭りも無事終わったし、数年前に起こった祟り騒ぎでも投下してみる。 事の始まりは雛祭りも近いある夜の事。 突然、近所に住む若い母親Aが訪ねてきた。 彼女は開口一番 「お雛様貸してください」 何でも、義母にお雛様(と娘)の写メを送れと言われたらしい。 冗談じゃない。 でも相手は玄関の中にいる。 “私”の雛人形を“他人”になんて貸し出せない。 他をあたってくれとかなり冷たくあしらった。 するとAは、たまたま玄関に飾ってあった古い雛を見て 「じゃあ、コレをちょうだい!」 さらに冗談じゃない。 その... 続きを読む
血雪
全国的にずいぶん雪がふったね。 おれの住んでいる田舎町(はっきり言ってド田舎)も、ふだんはあまり雪は降らないんだけど、今回はずいぶん降った。 で、2年前の、同じように雪がひどく降ったときの話だ。 その日、おれは2階の部屋で一人寝ていた。 おれの家はショボい専業農家で、50代の親父と母ちゃんと、おれの3人暮らしだ。 まだ明け方前だけど、下の階で親父がガダガタなにか音をたてて、玄関から出ていくのを、おれは布団のなかでうつらうつらしながら聞いていた。 天気予報じゃ大雪になるって言ってたので、親父はビニールハウス... 続きを読む
亀岡の峠
以前、伯母が京丹波に住んでた時の話。 俺の母親の年の離れてた姉で、子供がいなかったのもあって、半分孫みたいに可愛がってもらった伯母なんで、孝行せんといかんと思ってたんで、そんなに面倒がらずに行ってた。 まあだいたいは何か持っていく物があったり、伯母の体調が悪かったり、何か用事があるときなんだが。 母も一緒に乗ってたこともあったが、仕事もあるし、なかなか俺の予定と合わなかったりして、大抵一人ドライブだった。 こちらは大阪北部、京丹波までは一旦京都に出て縦貫道に乗り換えるとずっと高速で行けるんだけど、ぐるっと... 続きを読む
ネズミ
職場の先輩から聞いたお話です。 先輩の母親は東北出身で、子供の頃は夏になると避暑を兼ねて田舎に訪問していたそうです。 田舎では母方の祖母が独り暮らしをしていて、車で10分程度のところに長女夫婦が住んでいたそうです。 家は平屋の日本家屋で、天井裏をネズミが走り回るような築年数の古い家。 幼い頃は怯えていたネズミの足音も、小学生にもなれば都会のマンションでは経験できないことだとしておもしろく感じるようになってたそうです。 母親も祖母も慣れたものなのか「ああまたネズミだねぇ」なんて言う程度で気にする様子はなし。... 続きを読む
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