ネズミ

職場の先輩から聞いたお話です。

先輩の母親は東北出身で、子供の頃は夏になると避暑を兼ねて田舎に訪問していたそうです。
田舎では母方の祖母が独り暮らしをしていて、車で10分程度のところに長女夫婦が住んでいたそうです。
家は平屋の日本家屋で、天井裏をネズミが走り回るような築年数の古い家。
幼い頃は怯えていたネズミの足音も、小学生にもなれば都会のマンションでは経験できないことだとしておもしろく感じるようになってたそうです。
母親も祖母も慣れたものなのか「ああまたネズミだねぇ」なんて言う程度で気にする様子はなし。

先輩が中学生のとき恒例のように田舎に行くとネコがいたそうです。
祖母いわく、庭に立ち寄る野良猫にエサをあげていたら居ついてしまったとのこと。
「これでネズミもいなくなるね。捕まえてきたことある?」
世間一般的にごく当たり前のことを祖母に尋ねると、
「いやぁ、ネコにネズミが捕まえられるわけないでしょう」
先輩は「???」と思いつつ、結局は「家のネコはネズミを捕まえたことはない」という返事だと受け止め、祖母の言い間違えか自分の聞き間違えなのだろうと思ったそうです。
祖母は訛りが酷かったそうなので。
実際に天井裏でネズミの走り回る足音が聞こえてくるたびに、それまで寝たり遊んだりしていたネコが逃げるように部屋から出て行く光景を滞在中に何度も目にしたそうです。
先輩は「田舎育ちのくせにネズミを怖がるなんて気の弱いネコだなぁ」と笑っていたそうです。

その後祖母は体調を崩してしまい独り暮らしは無理だからとネコと共に長女夫婦と同居を始めたそうです。
先輩は高校受験や進学後は部活などで田舎へ行くことがなくなってしまい、大学に進学してすぐに祖母が亡くなり葬式に出たそうです。
葬儀の後に長女夫婦の家で休んでいたところ、ネコが庭でボールのようなものを転がすようにして遊んでいたそうです。
なんだろうとよく見てみるとボールではなくてモグラで、都会育ちの先輩は相当驚いたようです。
「このあたりのネコはああやって遊ぶんだ」
先輩の驚きように伯母が笑って応じたそうです。

「このネコは婆ちゃんちでネズミ怖がってたよ。大人になったのかな」
「まぁ、ネズミはモグラと違うからね」
「でも普通はネコってネズミ追い掛けたりするでしょ」
「そうだね、ネズミはよく追い掛け回して遊んでるよ」
「ネズミを怖がってるのにネズミを追い掛け回して遊ぶってどういうこと?」
「ネズミとネズミは違うもんだよ」

またもや先輩は「???」状態です。
詳しく聞こうと思ったけど伯母も訛りがひどいうえに詳しいことはよく知らないようで、結局よく理解できないままだったけど、こういうことらしいです。

・『ネズミ』は『ネズミ』だとしか言いようがない。
・『ネズミ』は前歯の大きなチューチュー鳴く哺乳類のネズミとは別物である。
・『ネズミ』は鳴かない。
・『ネズミ』は天井裏にしかいない。
・『ネズミ』は何もしなければ何もしてこない。

「そういえば、あれだけ散々ネズミが天井裏を走り回っていたにも関わらず、婆ちゃんちでは電気コード齧られたとかガス管齧られたとか壁齧られたとか台所で食べ物荒らされたとか、そういうことは一切なかったんだよねー」
伯母も昨年亡くなり、昔のそのやりとりをふと思い出したそうです。
母親も詳しいことは知らないらしく、結局先輩は『ネズミ』がなんなのかわからないままだそうです。

67 名無しさん 2009/03/23(月) 16:49:22 ID:sk7VkYt.0

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  • 名無しさん

    ratとmouseみたいなもんかな。

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