家は昔質屋だったと言っても、じいちゃんが17歳の頃までだから、私は話でしか知らないのだけど、結構面白い話を聞けた。 『電話機』 喜一じいちゃんの時代は電話が無かった。 無かったと言っても一般家庭での話で、お役所や大手の企業等は所有していた。 喜一だって何度か市役所で見たことがあったが、それでも少年にとっては未知の世界の機械。 ある日、そんな特別な電話機を蔵で発見したのだ。 それはもう、喜一にとっては大事だった。 蔵を飛び出し、ドタドタと縁側を駆け抜け店へと走る。 「何で何で!! 電話機が蔵に! 蔵に!?」... 続きを読む
羊が来た
小学生の頃の冬の話。 母親は台所で料理してて、俺はテレビを見てた。 インターホンが鳴って、母親が出た。 どうやら父親がいつもより早く帰ってきたらしい。 手が離せないからと言われ、俺は玄関の鍵を開けに向かった。 廊下の奥からドアを叩く音と 「寒いー早く開けてくれー」 という父親の声が聞こえた。 小走りで廊下を駆けて、玄関を開けた。 父親の顔をした羊が俺の目の前にいた。 ドアを閉め一目散に逃げたが、母親は父親が帰ってきたと思っているので、なかなかリビングに来ない父を迎えに玄関へ行った。 鍵が開いているのに開け... 続きを読む
マクドナルド親父
俺の親父はマクドナルドが大好きで、毎日一回はマクドナルドの商品を食わないと落ち着かない。 本人はいいんだが、それにつき合わされる俺達家族はたまったもんじゃない。 次第に一緒に食べに行くのを敬遠しだした家族の態度に、親父は不満げだった。 なぜ食わない? 俺と一緒は厭なのか? 違う、マクドナルドが厭なだけだ。 俺も母親も妹もはっきり親父にそう言った。 その日一日親父はふさぎ込んでいた。 だが、親父は反省したわけではなかった。 日曜日の夜、明日の学校の支度をして、部屋の電気を消した。 妹は既に2段ベッドの上で寝... 続きを読む
卒業のサイン帳
卒業式のシーズンになると、時々思い出すことがある。 最近ふと思い出したので、書いてみようかな。 まあ、いろいろとプライバシーの問題などあるので、詳細は勘弁願いたい。 高校入試も終わり、あとは卒業式を待つだけの日々。 クラスの女子連中が、サイン帳の交換で盛り上がっていた。男は半数くらいやってたかな。 俺は遠慮して、回ってきたサイン帳にもっぱらテキトーなことを書きなぐっていた。 他のクラスメイトは何を書いているのか、ぱらぱらページをめくっていると、誰がやったのか悪質な書き込みがあった。 『おまえが死ねばよかっ... 続きを読む
落とし穴
一昨日、俺の祖父さんの家に行ったときに聞いた話。 俺の祖父さんが子供の頃は地方の田舎、それも結構山奥に住んでいたらしいんだけど、その頃にそこの子供達の間では、落とし穴作って友達とか近所の大人を落とす悪戯が流行っていたらしい。 その当時、遊び道具も手に入りづらい状況だったからか、大人たちが自分たちが昔遊んだ落とし穴作りを教えたという。 比較的柔らかい地層だったのか、山道とかでも大きめのスコップがあれば、子供でも根っこに当たりさえしなければ随分と深く掘れたらしい。 大人の膝辺りまでの穴も掘れば、一日がかりで腰... 続きを読む
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