この話はアルバイトを通して親しくなった森脇さんという人が、休憩室で時間を潰していた時に、私に話してくれたお話なんです。 普段はひょうひょうとして、人を笑わせたりおもしろい話をする森脇さんなんですが、この日はやけにマジメな顔をして、私に話をしてくれたんです。 この森脇さんは東京の下町生まれです。 森脇さんがまだ小学校の1年生の時。 季節は夏、そろそろ夏休みが終わる頃でした。 住んでいる場所の近くに、広い空き地があったんです。 夏草が4、50センチも生い茂る、広場だったんです。 その草が生い茂る広場に、いつの... 続きを読む
老人と穴
友人と2人で車でスキー旅行に行った帰り、真夜中3時過ぎ、東北の某村を、近道して通り抜けようと車を走らせていました。 土地勘が無い上に街灯の無い真っ暗な道で、2人共かなり不安でした。 両脇の畑は残雪で真っ白でした。 不意に脇から松明を持った老人が、何か叫びながら私たちの車に向かってくるのが見えました。 老人の表情が尋常で無いのが怖かったのですが、何を言ってるのか聴く事にして、車を止めて窓を開けました。 方言で聞き取りにくかったのですが、怒った口調で先に行くなと言ってるようでした。 しかし、今から来た道を戻る... 続きを読む
逆さまの樵面
私が生まれる前の話なので、直接見聞きしたことではなく、その点では私の想像で補ってしまう分もあることを先に申しておきます。 それから地名、人名等は仮名としました。 もったいぶった始め方ですが、この話の終わりには家の戸口に影が立つこともあるかも知れません…… 私の生まれた村はつい先日合併によって閉村し、別の名前の町に生まれ変わりました。 しかし千羽神楽の名は残っています。 室町時代から脈々と続くこの夜神楽は、かつて村の4つの家によって継承されてきました。 稲には実りを、また山には厳しい寒さをもたらす神々を、歓... 続きを読む
ウサギ穴
小学校の頃、僕の通っていた学校の裏には小さな山があって、みんなからは普通に裏山と呼ばれていた。 小学校は三階建てだったのだけれど、裏山はその小学校の二倍程度の高さしか無かった。 学校側から裏山を上って反対側に降りると、細い県道に出る。 学校の規則で、裏山には休み時間は上っちゃいけなかった。 それでも僕は、友達と一緒によく裏山に上った。大体昼休みに。 まばらに木が生えてるだけの何も無い山だったけど、子どもにとっては十分な遊び場だった。 それで良く先生に叱られた。 「ごめんなさい。もう裏山には行きません」って... 続きを読む
犬を恐れる
地元の一帯っと言っても町の一地域だけだが、犬を恐れてる。 飼ってる家もなく、野良犬を見掛けると皆見ないように家に入ったり、その場から移動した。 だからと言って保健所に連絡する訳もなく、餓鬼だった俺は不思議で仕方なかった。 親や知り合いのオッサンに聞いても、 「狂犬病が怖いでしょ?」 とか 「あんまり構うな、襲われっぞ!」 などで、ハッキリした理由が分からなかった。 友達に聞いたりしたが、誰も理由をしらず、暫くの間俺を悩ませた。 ある日、友達2、3人とで、林の中の秘密基地で戦争ごっこしてた時、友人Aが犬を見... 続きを読む
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