扉の向こう

古いものを家主のいなくなった家から回収して、業者に売りに出す仕事をしています。 一般の人から依頼があって回収することもあるし、解体業者からお呼びがかかって現場に出向くこともあります。 その日は、知人の親戚の家が誰も住まなくなって十数年放置されているので取り壊す、取り壊す前に空き家に残っているものを整理してくれないか、という事で現場に向かいました。 福岡市内から車を1時間30程走らせた山間の集落で、人の気配はあるのですが、過疎が進んで他にも空き家がめだちます。 かなり大きい屋敷のような家だと聞いていたので、... 続きを読む

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通学路の釣り人

ある地方の村で起こった話。 その村、山中に這うように細長く民家が点在する、いわゆる寒村だ。 人口は少ない。 当然、子供も少ない。 村に住む少数の小学生たちは、山道を4Kmも下った小学校まで毎日歩いて登校していた。 小学校までの道のりは、彼等にとってさほど苦痛ではなかった。 年上の子供が年下の子の面倒をよく見ながら、他愛のない会話に盛り上がり、コロコロ笑いながら日々の登下校を繰り返す。 自動車のすれ違うのも難しいほど細い道を、彼等は毎日歩いていた。 ある冬の初め、子供たちはひとりの男に出会った。 男は釣り人... 続きを読む

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霊魂を迎える行事

先日体験したばっかりの霊体験。 自分の実家は西日本の漁村だ。 正直田舎、それもかなりの。 ご先祖様の霊魂をお迎えし、また送り出すという盆の行事も勿論普通に行われてる。 うちの村の場合なんだが、海岸から沖に向かって防波堤が伸びてて、この一番先に門(と言っても大人が屈んでくぐれるくらいの木枠)をこさえて、その門から毎年8/7に霊魂を迎える。 防波堤は岩を敷き詰めて作ったもので、盆の間は魂の通り道になるから、生きた人は近づいちゃいけないことになってる。 8/8から8/14までは、その海の目の前にある寺の墓に、行... 続きを読む

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砲兵森

私は元陸上自衛官で、関東にある某普通科連隊にいました。 残念ながら私が体験した話ではなく、在隊時にMという上官から聞いた話を書きます。 本題に入る前に、陸上自衛隊の演習場について説明します。(興味無い方、すみません) 陸上自衛隊には全国各地に演習場があり、関東甲信越の部隊がよく訓練に利用するのが『富士演習場』です。 ここは総合火力演習なども行われるので、民間の方でも行った事がある人がいると思います。 富士演習場は、静岡県側の『東富士演習場』と山梨県側の『北富士演習場』の2箇所に分かれており、今回の話の舞台... 続きを読む

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溜池の声

子供の頃に爺ちゃんに聞いた話を一つ。 私の爺ちゃんは若い時に軍属として中国大陸を北へ南へと鉄砲とばらした速射砲を持って動きまわってました。 当時の行軍の話を聞くと、本当に辛かったとこぼしてました。 通常の鉄砲や弾や手りゅう弾の装備だけでもかなりの重さの上に小隊で手分けをしてばらした速射砲を一人一人が持たないといけなかったので、とにかくそれが重かったと。 そんな感じに一人当たり何十キロもの装備を持って、ろくな道も無い山の中の行軍で、しかも、水もそんなに飲まないで行軍していたので汗が乾いて白い塩が粉の様に顔に... 続きを読む

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