川の淀み

爺さんの葬式のときに聞いた話。 山村で生まれ育った爺さんがまだ少年だった頃、テツという犬を育てていた。 朝と夕方にテツと散歩をするのが爺さんの日課だったんだけど、長雨の後、数日振りに散歩へ行くとおかしな物を見つけた。 川の澱みに何か黒っぽいものが浮かんでいたそうだ。 「土左衛門か?」と思ってそれへ駆け寄ろうとしたら、テツが唸り声を上げて近寄ろうとしない。 仕方なく、テツをそのままにしてその物に駆け寄ると、それがのろのろと立ち上がった。 それが何だったのかは爺さんにも分からなかったらしい。 肌は白いような灰... 続きを読む

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DQ返し

トメにしてすっきりしたDQ返し。 トメは小学生の娘を病気で亡くしていて、生きていれば私が同い年である事もあってか、やたらと私のする事が気に障るようで 「どんな風に育ったのかしら?」 「私の娘ならもっと……」 「自分の趣味なんて主婦になったのにおかしい」 みたいな感じでチマチマ嫌味を言ってくる。 物凄く悪い人でも無い事は解かっていて、ポロっと口に出した後で自分でもたまにしまったという顔をするので、無意識に私と死んだ娘を比較してまうようで、私の存在が気に障るようだった。 そんなトメが密かに大切にしている物は、... 続きを読む

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ガキ大将

昨日、今日と帰省してきた。 俺の郷里ってのが海と山に挟まれた小さな町で、スーパーくらいはあるけど、山を越えないとデパートとか、そもそもが駅さえ無いようなドイナカなのな。 子供時分も、山側と海側に小学校が一校づつ、海側に中学校が一校しか無くて、それ以外に隣り合う校区ってのが無い、小さな小さな世界で暮らしてきたわけ。 そんで俺は海側の人間で、中学に進級すると山の奴らとも同じ学校になるわけだけど、とにかく奴ら、排他的っていうか、全員が同じ一族みたいな気味悪さがあってさ。 人数が俺ら海側の1/4くらいしかいなかっ... 続きを読む

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神社に迷う

自分は出張で1~2週間ほど遠くに出る事があり、出先で貰った休みにはネットで調べた遊歩道や山歩きコースを散策するのが好きで(といっても本格的な登山ではなく、私服に運動靴のレベル)出張の度にそういった場所を回っている。 こんな怖い板見てる癖に人気のない山林が好きとかどうかとは思うが、風の強い山中で風に煽られた木々がざわつくのを聴いていると落ち着く性格で、でも可愛らしい妖怪とか出会った事が無い、残念。 それで、今から1年ほど前に新店の応援のために10日間の出張を命じられ、新規出店準備から告知案内、チラシの投函な... 続きを読む

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イビナ

田舎に祖母の家があり、幼い私は夏休みなので母親とそこへ遊びに行っていた。 うとうとしていた私がふと目を覚ますと、母親が皿を片手に目の前に立っていた。 母は無表情で皿を差し出して 「白菜を甘く煮たやつ(当時の私の好物だった)だよ」 と言う。 でも皿の上のはどう見ても白菜じゃなくて、見たことのない野菜。 それにしつけに厳しい母親が、ご飯時でもないのにご飯を食べさせるなんておかしい。 そう思って私は拒否したけれども、いつもと違う母親の様子に負けてそれを食べた。 甘くもなく、野菜特有の臭みもなく、ものすごくみずみ... 続きを読む

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