ナガレボトケ

海専門の民俗学教授から聞いた話。 海難法師だとか海の向こうから流れてくるモノを忌み畏れる風習っていうのは農耕民族的な考え方で、本来は漁民から発した価値観ではないらしい。 むしろ漁民は古来、漂流して来るモノはすべて海神からの授かり物として歓迎するのが一般的だった。 たとえばそれが水死体であっても。 ナガレボトケといって、漁中に漂流死体を見つけると、漁師は作法にしたがって船に引き揚げて陸地へ持ち帰り、手厚く葬ると大漁をもたらしてくれるので、これに出会うととても喜んだという。 中にはナガレボトケを拾った事を他の... 続きを読む

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遠回りする理由

小学生の頃の話。 下校時、よく道路沿いの家と家の間の小道を通って帰っていた。 この小道を通ると近道になるというわけではなく、むしろ遠回りになるが、ある理由によりこの小道を通っていた。 その理由は後で説明するが、この小道は2メートルほどの高い塀に囲まれていて、入り口の両方の塀にお札のようなものが貼ってある。 かなり古く何が書いてあるのかもわからない。 距離はかなり長く、50メートルほど歩くと住宅街に出て、右に進むとさっきの道路沿いの道に出る。 ある日、またその小道を通って帰っていたが、住宅街に出ると道に迷っ... 続きを読む

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感情のない少女

1968年、イングランドのニューカッスルの空き家の2階で、一人の幼児の死体が発見された。 死んでいたのはマーティン・ブラウン(4)だった。 傍には劇薬入りの小瓶が転がっており、警察は、遊んでいる最中にマーティンが誤って毒薬を飲んだ、という結論を出した。 怖いもの知らずの子供が起こした不運な事故の一つと認定されたのだ。 少なくともその時までは。 しかし、事故の二日後、マーティンが通っていた保育所が荒らされ、紙切れが残っていた。 その紙切れは、子供の字でこう書かれていた。 『わたしがころした。だからまたやって... 続きを読む

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垂れ下がった髪の毛

姉さん大学卒業してもう仕事就いてて、電車通勤なのね。 仕事就いてから、そのとき付き合ってた彼氏とすれ違いが多くなって、結局別れたんだってさ。 しかも浮気されてて、問い詰めたら彼氏が逆ギレ。 彼氏が学生で野放し状態だったいうのもあるし、彼氏のわがままに付き合わされて疲れたし、 潮時だなって思ってそのままケンカ別れ。 そんな、フリーになった年の出来事。 姉さん仕事でクタクタになって、満員の終電電車にゆられながら家に向かってた。 座りたかったけど、席は空いてナッシング。仕方なく我慢して立ってた。 地下鉄の駅で電... 続きを読む

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引っぱる

漫画家の水木しげるが書いた『のんのんばあ』の話に『引っぱる』というのが出てくるが、数十年前まで俺の住んでいた地方でもこれに似たことがあったんで書いてみる。 当時自分はまだ小学生だった。 『引っぱる』というのは、今まさに死んでいく人間は、その死のまぎわに生きた人を道づれにして冥土に旅立ってゆくことができる、というような話。 うちは四国の山奥の集落だったんだが、当時90過ぎのひいばあさんが肺炎になった。 ひいばあさんくらいの年代は意地の強い人が多くて、前日まで腰を曲げて畑に出ていた年寄りが、明くる日ぱたっと倒... 続きを読む

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