ナナシ

今から数年前,僕と僕の友人だった人間が、学生だったころの話。 ときは夏休み、自由研究のため、友人……仮にナナシとするが、僕はそのナナシと「心霊現象」について調べることにした。ナナシはいつもヘラヘラしてるお調子者で、どちらかといえば人気者タイプの男だった。 いるかいないかわからないような陰の薄い僕と、何故あんなにウマがあったのかは、今となってはわからないが、とにかく僕らはなんとなく仲がよかった。なので自由研究も、自然と二人の共同研究の形になった。 また、心霊現象を調べようと持ち掛けたのは... 続きを読む

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背後で唄う女

俺の体験の中で一番怖かったのは、学生さんって呟いて唄ってる女が怖かったな。 学校終わって図書館の学習室から帰るときに郷土資料室からヒョロッと出てきて「ガクセサン、ガクセサン、ソッチハ、キケン♪ガクセサン、ガクセサン、ソッチモキケン」って背中の近くで歌われて。 気持ちわりいなぁって思いながら振り向いたら、同じように振り向いて、又帰ろうとしたら「ガクセサン、ガクセサン、ミズノミカワク♪ガクセサン、ガクセサンヒノコノモユル」って図書館出ても後ろで歌ってる。 いい加減「なんですか?」って振り向... 続きを読む

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図書館の女生徒

うちの学校の怪談。 20年以上前に腰まである髪の生徒がいて、友達がいなかったために、いつも休み時間や放課後は図書館の窓辺に腰掛けて本を読んでいた。ある日、事故(ノイローゼで自殺説も有り)で落ちて死んでしまった。 彼女の名前が残る図書カードの本を20冊借りると、彼女が窓辺に現れる。(長い髪の毛が本にいっぱいはさまってる説もある)それでノイローゼになる子が続出して図書館の図書カードが廃止されてバーコードになった。彼女の借りた本を全部借りると家まで付いて来るらしい。図書室の資料室のどこかに彼女の文... 続きを読む

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漂着した仏像

中学校2年のときの話。 俺は家は漁師じゃなかったが海辺に住んでた。というか前の浜から背後の山までせまくて細長い土地の町だったんで、ほとんどの人がが海辺に住んでると言えるんだけどな。 それで今でいうビーチ・コーミングを趣味としてた。当時はそんな言葉はなかったけど、簡単にいえば漂着物の収集のこと。日本海側の北の方だったから熱帯の貝やヤシの実なんてのはまず見られなくて、日本にない漢字やハングルが書かれた浮きなんかが多かったが、ときおり変わったものもあった。 ビーチグラスはもちろん古い陶器の破... 続きを読む

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母屋とは切り離され、敷地の北東の角、つまり鬼門にあたるところにその厠は建っていた。今でこそ田舎でも簡易水洗のおかげで明るく清潔なトイレに変身したが、ほんの数十年前までは薄暗く不潔な汲取り式の便所が大半だった。 Kさん宅の厠も、壁はところどころ地肌が見えるほど痛み、苔むした屋根瓦の何枚かは今にも落ちそうだった。申し訳程度の小さな窓しかない古い厠は昼間でも薄暗く、鼻をつく匂いが澱のように淀んでいる。日が暮れると、天井からぶら下がる、わずか10Wほどの明るさしかない裸電球が、弱々しく陰気な光で厠の内部を... 続きを読む

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