風習

ナガレボトケ

海専門の民俗学教授から聞いた話。 海難法師だとか海の向こうから流れてくるモノを忌み畏れる風習っていうのは農耕民族的な考え方で、本来は漁民から発した価値観ではないらしい。 むしろ漁民は古来、漂流して来るモノはすべて海神からの授かり物として歓迎するのが一般的だった。 たとえばそれが水死体であっても。 ナガレボトケといって、漁中に漂流死体を見つけると、漁師は作法にしたがって船に引き揚げて陸地へ持ち帰り、手厚く葬ると大漁をもたらしてくれるので、これに出会うととても喜んだという。 中にはナガレボトケを拾った事を他の... 続きを読む

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引っぱる

漫画家の水木しげるが書いた『のんのんばあ』の話に『引っぱる』というのが出てくるが、数十年前まで俺の住んでいた地方でもこれに似たことがあったんで書いてみる。 当時自分はまだ小学生だった。 『引っぱる』というのは、今まさに死んでいく人間は、その死のまぎわに生きた人を道づれにして冥土に旅立ってゆくことができる、というような話。 うちは四国の山奥の集落だったんだが、当時90過ぎのひいばあさんが肺炎になった。 ひいばあさんくらいの年代は意地の強い人が多くて、前日まで腰を曲げて畑に出ていた年寄りが、明くる日ぱたっと倒... 続きを読む

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疫病の厄除け儀式

うちの母方の実家が檀家になってるお寺の話。 このお寺はそれほど大きくもないし有名でもないんだけど、母が住んでた村の住民は三分の二以上がそのお寺の檀家になっていた。 残りの三分の一は被差別集落の人たちで、その人たちのための別の寺があったようだ。 ただ太平洋戦争後は過疎化が進んで、集落の人はほとんどちりじりにどこかに行ってしまい、 そっちのお寺はもうなくなっているらしい。 その実家のお寺には入ってはいけない場所、禁域がある。 子供の頃、母の里帰りについていったときに見て話を聞いた。 そこは寺の本堂の裏側を数百... 続きを読む

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ノウケン様

ついこの間までお盆の行事だと思いこんでた実家の風習を書いてみる。 実家と言うか、正確には母方祖母の実家の風習だけど。 母方祖母の田舎は山奥で、大昔は水不足で苦労した土地らしい。 それを地元の豪農の人が、私財をなげうってため池や用水路を作り、田んぼで米が作れるようになったそうだ。 でもこの用水路を造るにあたって、殿様というか藩? からなかなか許可が下りず、豪農の母親が自分の命と引き換えに嘆願した……みたいな話を、おばあちゃんから聞いたことがある。ウロ覚えでごめん。 ここまでが前置き。 んでおばあちゃんの地元... 続きを読む

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ヨシユキ様

うちの地域では俺の母親が子供の頃あたりまで、男の子でも女の子でも3~4歳くらいになると必ずあやとりを覚えさせられた。 技は一種類だけで『蛾』と呼ばれるもの。 これはけっこう複雑な取りかたをするが、素早くできるようになるまで何度もくり返し練習させられたそうだ。 今は産業としては成り立たなくなっているが、ここいらは昔は養蚕が盛んで、集落の裏の山(400mほど)のなかほどに『蚕霊塔』と呼ばれる供養塔がある。 こういう供養塔は明治以降、製紙工場の近くに作られたのが多いが、裏山のはかなり古い時代のものらしい。 この... 続きを読む

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