子堕ろしの湯

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あまり怖い話ではないんでここに投下。

もう十年以上前のことになるけど、木曽のほうに2泊3日の予定で釣りに行ったんだよ。
6月に会社の計画年休があって、同僚と二人で俺のハイエースで出かけた。

1日目は日中晴れて釣果もそこそこあったが夕方から雷雨になって、車中泊であまり眠れなかった。
翌日も雨で、それでもカッパ着て竿を出したけどつらくなってきて4時頃にはやめた。
天候は回復しそうにないしもう帰ろうかとも相談したが、とりあえず街に出て一杯ひっかけからビジネスホテルにでも泊まろうということになった。

で、県道を走ってると細い脇道があって「えびす温泉」という木の案内板が見え、それがすごく古びた感じで、きっと源泉の宿だろうから行ってみないかという話になった。
脇道に入るとゆるい上り坂になり道路の舗装がきれて山の中に入っていく。

温泉はガイドに載ってないし、ナビでも出てこないんで少し心細くなってきた。
山の登り口に停めた軽トラに乗り込もうとしているじいさんがいたんで温泉のことを聞いてみた。
じいさんの話では一軒宿の温泉があるにはあるが、経営者の夫婦が年をとり建物も老朽化して、今は親戚や知人くらいしか泊めてないはず、ただ風呂は入れるし上等の湯質だとのことだった。

まあここまで来たんだからと進んでいくと、道の上りがきつくなり車の窓は閉めてるのに硫黄のにおいがしてきた。
山のまだすそのほうだと思うけど、木が少なくなり白っぽい山肌がむき出しになって、あちこちから湯気があがってる場所に出て、向こうに温泉宿が見えてきた。

カヤ葺きのいかにも古びた雰囲気の建物で、わざと古風に造られてるんじゃなく豪農の家を宿屋に改築したという感じ。
『蛭子温泉 源泉』という一枚板の看板がある。

宿の前は広い空き地になってたんで適当に車を停めて玄関に向かった。
大きなガラスの4枚戸をあけて、ロビーも何もないようだったから大声で「ごめんくださーい」と呼ぶと、ややあって老夫婦が出てきた。

話してみると、宿はもうやってないがせっかくここまで来たんだから泊めてもかまわない、風呂は入れるが飯はたいしたものは出せない、ということだった。
料金を聞いてみたらびっくりするくらい安かったんで、ちょっと相談して一晩世話になることにした。

二階に案内され、建物は見た目より奥行きがあって廊下の両脇に部屋がいくつも並んでいる。
その一番奥が俺たちの部屋で6畳と8畳の二間。その6畳のほうに奥さんが布団をひいてくれた。
そこに寝転がって、やることもないんで年代物のテレビをつけたが映らない。
電気がきてないわけではないので電波の調整をしてないみたいだ。

そうこうしているうちに奥さんが夕飯を持ってきてくれた。
肉鍋と山菜のゴマ和えという内容だったがビールがついてたんでそこそこ満足した。
飯を食ってしまうといよいよやることがなくて風呂にいくことにした。

一階に下りて声をかけると主人が顔を出して、浴場のある地下への階段を教えられた。
せまく急な木の階段を下りていくと木戸が一つだけあって混浴のようだが、どうせ俺らしかいない。
木戸を開けて驚いた。

岩窟風呂というのか、全体が大小の岩の組み合わせでできていて天井が高く照明も薄暗い。
脱衣所はなくて下に竹籠が置いてあったのでそこに服を入れた。
洗い場もないが風呂自体はかなり広い。

「すごいなここ」
「山の中を掘ったみたいだな。これって宣伝しだいでうけるんじゃないか」
「臭いもすごい、硫黄ガスなんか危なくないかな」
などと話したが、岩の裂け目がところどころにあって風が流れてくる。

湯は白色で熱い。
風呂の向こう側1/4くらいが黄土色の湯ノ花で埋まってた。
その表面がぼこっぼこっと盛り上がってはじける。
底から温泉がわき出しているようだ。

俺が入り口側、同僚が向かい合う形で奥のほうでつかっているといい気持ちになってきた。
すると同僚の後ろの湯ノ花溜まりが少しずつ盛り上がってきた。
大きなガスの塊かと思って見ていたら、ずぼっという感じで泥人形が立ち上がった。
人の背丈くらいでつるっとした坊主頭。
両目はただの穴で、鼻も口もない。
たらたらと液状の泥が全身からしたたっている。

俺が「あーっ」と大声を出して立ち上がると、「何だよ」と同僚もつられてか立ち上がった。
「うしろ、うしろ」と俺が指さしたときには、泥人形は崩れ落ちて湯ノ花のしぶきが振り向いた同僚の腰にかかった。
同僚の手を引っぱって風呂から上がり、今見たことを説明したが、泥が崩れる最後しか見ていなかった同僚は信用しない。

とりあえず風呂から上がり、部屋に戻ってからもう一度風呂の中で見たものの話をした。
「変なこと言うなよ、ただ泥が動いただけだろ。あんないい湯だったのに」
とやっぱり取り合ってくれない。
そうすると自分でも見間違いのような気がしてきた。
それから同僚と少し釣りの話をして寝た。

次の朝は快晴で、同僚は朝風呂にいこうとさそったが、俺はいかなかった。
「やっぱり何もおかしなことはなかったぜ」
と同僚が戻ってきて言った。
朝飯を食べて、料金を払い礼を言って宿を出た。

それから渓流に向かったが、その日はびっくりするくらい釣れた。
昼過ぎまで釣って帰った。

話はこれだけ。
その後同僚も俺も結婚して今も同じ職場にいるが、同僚の奥さんは3回流産して子供がない。
まあこのこととは関係ないと思うけども。

763 本当にあった怖い名無し 2013/01/31(木) 21:14:32.02 ID:w1P/5y8D0 より

過疎スレで上の話と関係ありそうなのを見つけた
同じ人が書いたんだろうか
温泉の場所は違うみたいだけど

773 本当にあった怖い名無し 2013/02/02(土) 00:51:18.22 ID:P4JgGvg30 より

若い頃の恥ずかしい話なんでこのスレに書いておく。
ヒルコという神を知ってるだろうか。
これは古事記に出てくる国産み神話で、イザナギ神とイザナミ神との間に生まれた最初の子のことだ。

しかし子作りの際に女神であるイザナミから声をかけた事が原因で、不定形の混沌の子として生まれ、3歳になっても足が立たなかったので、葦の舟に入れられオノゴロ島から流されてしまう。
このヒルコの境遇が同情されたためであろうか、日本の各地に流れ着いたとの伝承があるらしい。

そしてこのヒルコ神は海から流れ着いて浜に幸をもたらすものとして、海の幸の神であるエビス神と同一視された、あるいはエビス神の源流になったとも言われている。

当時俺は家庭がありながら、会社の若い女子社員と関係を持っていた。
早い話が不倫だが、この女子社員が妊娠し、しかもそのことを隠していた。
ただお腹も大きくなってくるし口調の端々からも薄々感づいてはいたので、あるとき思い切ってそのことを問い詰めると、絶対に産む、奥さんと別れてほしいと、安いドラマにあるような修羅場になってしまった。

俺は社会的な信用の大切な職についていて、離婚という選択ははなからできない。
まして二十も年の離れた自社の女子社員と結婚などできるわけがなく、ほとほと困り果てた。
今から思えば身勝手な話だが。

ところがある筋から奇妙な話を聞いた。
琵琶湖の奥に不思議な力を持った温泉があって、そこで湯治するだけで、お腹に子供がいる場合は母体には何の影響もなくきれいに流れてしまう。
妊娠の後期であってもその力は変わらないという。
何でも神代に近い昔から絶えることなく湯が湧きだし続けていて、いつ頃からその効能が明らかになったかは不明だが、江戸時代にはすでに子堕ろしの隠し湯として藩の管理下に置かれていたようだ。

それが明治の世になって政府の知るところになり、教科書に名前が載っているような元勲らにも利用されていた。
その後、太平洋戦争の混乱でいったん秘密は失われかけたが、代々その温泉を守ってきた一族が必死に守り通して現在に至るという。

名前をヒルコ温泉という。

結論から書くと、コネがあってその温泉を利用させてもらった。
効き目はものすごいもので、外科的なものからホルモンの分泌など妊娠していたという痕跡さえ消し去ってしまう。
その女子社員とは、円満とはいえないが金の力で別れることができた。
その後自殺したなどということはない。

会社をやめ若い男と結婚して家に入った。
ただし子供はできなかったようだ。
それが温泉のせいなのかはわからないが。
30年以上前の話。

39 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/02/01(金) 16:49:11.23 ID:E3i7U/Q40 より

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コメント

  1. 匿名 より:

    30年以上前に20も年の離れた女子社員と結婚できないって
    あんたいくつだよw

  2. 匿名 より:

    70過ぎのじーさんだって、老後の暇つぶしにネットくらいやる時代だろう。

  3. 霊感ゼロのオカルトマニア より:

    うらやましーなチクショー!

  4. 匿名 より:

    70代の語り口ではないような‥
    身バレしないように誤魔化した?

  5. 匿名 より:

    関東の人って、山梨から西の地理が分かってないよね。
    木曽は長野岐阜で中部地方、琵琶湖は滋賀で近畿地方。
    どう一緒になるのか。

    あと、「えびす温泉」と言う旅館はあったが温泉はない。白骨温泉あたりにあった旅館名だ。
    都会の人は温泉とついてたらそれが温泉名だと思うんだな。

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