『いわて怪談奇談珍談』という、岩手の地元紙・岩手日報が編纂した文芸書がある。 この本は岩手日報に寄せられた怪談・奇談を一冊の本にまとめたもので、その大半は如何にも民俗学の故郷である岩手らしく、人魂を見ただの狐狸妖怪に化かされただのという、ごくごく牧歌的な話なのだが、その中に少し異様な話があったので紹介。 その話の体験者(女)は、以前インドネシアのジャカルタに、夫と共に住んでいたことがあったそうだ。 夜も摂氏27度を超える熱帯夜。 防犯対策のため鉄格子がはめられた窓の外には、薄ぼんやりとした電灯が光っていた... 続きを読む
沼の女の子
俺の親父は教師で、俺は小学校二年まで教員住宅に住んでたんだ。 俺のウチの裏は林になっていて、そこに『そこなし沼』って俺らの間で呼ばれてた沼があったんだ。 ほんとはちょっとした水溜りのようなもんだったんだけど、その周りではクワガタがたくさん捕れるんで、よく友達と遊びに行ってた。 ある日の事、いつものように友達とクワガタ捕りに行くと、その沼の奥になにやら白い人影が見える。 白いワンピース着た中学生くらいの女の子。 普段人気のまったくない所だし、道なき道を泥まみれになりながら進まないと来れないような場所だってん... 続きを読む
常連
某チェーン店の居酒屋でバイトしてた頃の話。 Mさんという40代の常連がいた。 常連といっても、俺がバイトを始めた頃から店に一人でやってくるようになったのだが、ほぼ一月ほどは毎晩のように通ってきた。 何でも、居酒屋近くのビジネスホテルに滞在しているらしく、だいたい閉店間際にふらりとやって来て、本人定番のつまみを注文する。 それでお互い顔を覚えて、いつしか気安く対応する間柄になっていた。 何せ小さな店舗で、オヤジ系居酒屋だったこともあって、カウンター内で洗い物をしているとよく話し掛けてきた。 いつものようにモ... 続きを読む
曾じいちゃん
自分の実家は田舎の土地持ち。 先祖が周辺一帯の地主だったらしく、市史にも乗ってる。 家族が住んでる母屋自体はそんなに大きくないけど、敷地は広い。 母屋と前庭以外にも、離れ(父が二十歳くらいまで住んでた古い家。今は物置)、裏庭、温室、竹林、動物小屋跡(昔は山羊とか飼ってたらしい)、家庭菜園スペース、農機具小屋などがある。 前庭だけでもちょっとした体育館くらい建てられるサイズ。 そんなわけで、公道に面した門は大小合わせて五つあったりする。 で、田舎なせいもあって、庭に家族以外の人間が居るのはごく当たり前の風景... 続きを読む
エビぞり嫁
俺は幽霊なんかは見たことがないし、見たことがないから信じていなかったけどこの件があって以来、ものが「憑く」ということはあるんじゃないだろうかと思うようになった。 真夜中で、しかも暗い部屋の中での出来事なんで寝ぼけていたのかもしれないし何かの見間違いかもしれないけど。 携帯からなんでぶつ切りになるかもだけど書き込んでみる。 次の日がお休みだったんでその日は部屋で夜中までDVDを観ていた。 嫁があまり好きじゃないジャンルの映画だったので嫁は先に寝室で寝ていた。 二本観終わったら相当遅くなってしまっていたので寝... 続きを読む
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