俺んちは田舎で、子供の頃から絶対入るなと言われていた部屋があった。 入るなと言われれば入りたくなるのが人情ってもんで、俺は中学生の頃こっそり入ってみた。 何て事は無い、普通の部屋だった。 変な雰囲気もないし、窓からはさんさんと日光も入ってきて、何も怖くない。 なんだ、ただ単に部屋を散らかされるのが嫌であんな事言ってたのか、と思い拍子抜け。 退屈ということもあって、その場で眠ってしまった。 それでも金縛りにも全然あわないし、数時間昼寝して起きた。 寝てるときも起きてるときも怪奇現象一切無し。 やっぱり全然怖... 続きを読む
蛙のお宿
滋賀県に旅行に行ったときの話。 無計画で行った俺たちは、当日の昼過ぎにある激安民宿を予約した。 琵琶湖から少し離れた、田んぼに囲まれた民宿だった。 バーベキュー、釣り、湖水浴を終えて夜8時ごろ、のっぺりした顔のご主人に迎えられ入ったんだが、 ホントに少し広い家を宿にした感じだった。 その玄関に大きな蛙の置物。 疲れていた俺たちは、近くの中華料理屋で夕飯を終え、部屋に戻った。 よく見ると部屋には、蛙の掛け軸、蛙の小さい置物、蛙模様の障子、『蛙』と書かれた湯のみ…… また、部屋までに廊下を通るんだが、民宿をし... 続きを読む
蛍狩り
僕が大学生だった頃、バイト先だったバーのお客さんの話です。 Kさんは、その店にわりとよく来るお客さんで、当時20代後半の会社員。 僕と同じ茨城出身の人でした。 ちょうど今頃の季節で“蛍”が話題にのぼり、 「僕の地元は2、3年前までいっぱいいましたよ」 「俺の実家の近くじゃ、全然見れないんだよな。いいなぁ、蛍。見てえなぁ」 と話をしたのです。 一月ほど後。 久しぶりに店に顔を出したKさんが、他のお客さんがひけた頃合いをみて、 「笑ってくれてもいいんだけど……」 といって、ポツポツと淡々とマスターと僕に語りは... 続きを読む
危ない橋
高校生時代、陸上部で短距離走をやっていた俺は、夜学校が閉まってからも練習をする熱心なスポーツマンであった。 といっても、学校内に残って練習するわけではなく、自宅周辺の道路を走るのである。 中でも練習に好都合な場所は、100メートル程の長さのある橋の歩道であった。 住宅地では不可能な100メートルダッシュの練習が、思いっきりできたのだ。 だがその橋には縁起の悪い問題があった。 自殺である。 河を渡るために30メートル程の高さがあるその橋は、街灯も少なく、投身自殺者にとっても絶好のポイントだったのである。 実... 続きを読む
ミキちゃん
俺は東京で働いていて家庭を持ってたんだが、2年前からちょっとキツイ病気になって、入退院をくり返して会社をクビにされた。 これが主な原因なんだが、その他にもあれこれあって女房と離婚した。 子供は女の子が二人いるんだが、俺が生活能力がないんで女房が育ててる。 申し訳ないと思ってるが、今のとこ養育費なんかも払えないでいる。 それでなんとか病気のほうは小康を得て、今は郷里に帰ってきて療養している。 療養というと聞こえがいいが、実際は年老いた両親の元に一文無しで帰ってきたやっかい者だから、当然、近所も親戚の評判もよ... 続きを読む
最近のコメント