蝉がうるさく鳴き風鈴が心地よく鳴る、中学三年の夏休み。周りは受験勉強だの家族旅行だので遊ぶ友達もいなかった僕は、何もせずまったりと家でかき氷を食べてました。両親は仕事で、家は僕とおばぁちゃんだけです。 僕はふと庭を見ると、おばぁちゃんが松の木の下でイスに座り心地よく風にあたっていました。たまにはおばぁちゃんと話をしようと、僕もイスを持ち出し隣に座り「ねぇ、ばぁちゃん。昔話かなんかない?」と言いました。 おばぁちゃんはニッコリ笑って、「こんな老いぼれの話なんか聞いても楽しくないわよ(笑)」と言... 続きを読む
A日新聞奨学生
1980年の4月。大学という大学を落ち、オレは予備校生の身となった。「浪人」という名の何者でもない19歳の男に、親はもう一度無駄な期待と金を使い、さして意味の無い「新生活」が始まった。 3月の半ば、念仏のように「やればできる」と繰り返す母親に頷きながら、ダメ人間の見本のようなオレはテーブルの新聞広告に眼の焦点を合わせていた。 『A日新聞奨学生』 それがこの話の全ての始まりだった。予備校の入学金を出してくれて、しかも家賃はタダ。食事も付いてる。親に黙っていれば親から預かった金は全部小遣い... 続きを読む
はなすな
今まで怖くて誰にも話せませんでしたが、ようやく踏ん切りがついたので話そうと思います。これは私の実体験です。 小学5年生の冬のこと。私は当時、生徒会の副会長を務めていました。しかし所詮は小学生の生徒会。言ってみれば先生の雑用係のようなものです。 その日は雨が降っていました。じゃんけんに負けた私は、一人生徒会室で雑用をしていました。単調な作業にうんざりしながら気がつくと時刻は午後6時。生徒会担当の先生が教室に入ってきて、もう遅いから今日はこの辺で帰るようにと言われました。 雑用から解放され... 続きを読む
怖い夢を自在に見る方法
10年以上昔の、進研ゼミの読者投稿欄にあった話。 『怖い夢を自在に見る方法』というタイトルが目に止まった。『その方法とは、怖い夢を見たいと念じながら枕を踏んで寝るだけ。踏む回数によって怖い話のレベルが決まります。1、2回なら遊園地のお化け屋敷くらいですが、7回を超えたあたりから本当に怖くなります。最大レベルは10です』という内容だった。 ちょうど寝る前だったし簡単に実行できるとあって俺は枕を踏み始めた。いきなり最大レベルを見てしまうのもつまらないと思い、9回で止めて寝ることにした。 そ... 続きを読む
海から来る音
先日、数年ぶりに母方の実家に行ってきたので、そこら辺にまつわる与太話をしようと思う。ちょっと長いかもしれないが、話半分程度にお付き合いいただけたら幸い。 俺の母方の実家と言うのが本当にド田舎。今でこそ山の上の方に高架道路なんぞが通っているが、昔は山間を縫うように走る狭い道に沿うようにして家が並んでいて村と言うよりは集落と言ってもいいような、そんな場所だった。 そんな場所だからかは知らないが、昔話やら伝承やらそう言った類の胡散臭い与太話には事欠かず。かく言う俺も子供の頃からここを訪れるたびに少... 続きを読む
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