僕が大学生だった頃、バイト先だったバーのお客さんの話です。 Kさんは、その店にわりとよく来るお客さんで、当時20代後半の会社員。 僕と同じ茨城出身の人でした。 ちょうど今頃の季節で“蛍”が話題にのぼり、 「僕の地元は2、3年前までいっぱいいましたよ」 「俺の実家の近くじゃ、全然見れないんだよな。いいなぁ、蛍。見てえなぁ」 と話をしたのです。 一月ほど後。 久しぶりに店に顔を出したKさんが、他のお客さんがひけた頃合いをみて、 「笑ってくれてもいいんだけど……」 といって、ポツポツと淡々とマスターと僕に語りは... 続きを読む
心霊
危ない橋
高校生時代、陸上部で短距離走をやっていた俺は、夜学校が閉まってからも練習をする熱心なスポーツマンであった。 といっても、学校内に残って練習するわけではなく、自宅周辺の道路を走るのである。 中でも練習に好都合な場所は、100メートル程の長さのある橋の歩道であった。 住宅地では不可能な100メートルダッシュの練習が、思いっきりできたのだ。 だがその橋には縁起の悪い問題があった。 自殺である。 河を渡るために30メートル程の高さがあるその橋は、街灯も少なく、投身自殺者にとっても絶好のポイントだったのである。 実... 続きを読む
ミキちゃん
俺は東京で働いていて家庭を持ってたんだが、2年前からちょっとキツイ病気になって、入退院をくり返して会社をクビにされた。 これが主な原因なんだが、その他にもあれこれあって女房と離婚した。 子供は女の子が二人いるんだが、俺が生活能力がないんで女房が育ててる。 申し訳ないと思ってるが、今のとこ養育費なんかも払えないでいる。 それでなんとか病気のほうは小康を得て、今は郷里に帰ってきて療養している。 療養というと聞こえがいいが、実際は年老いた両親の元に一文無しで帰ってきたやっかい者だから、当然、近所も親戚の評判もよ... 続きを読む
トラックと軽自動車
この前、東京から岩手の実家まで車で帰った。 深夜、高速降りて真っ暗な田舎の道を60Kくらいで走ってた。 他に走ってる車も無かったし、ダラダラってよりはトコトコって感じの遅さで。 途中、結構長いトンネルに入った。 入って直ぐにグオーン!て音が響いた。 パッとバックミラーを見ると、いつの間にか後ろにまっ黄色のライトの大きいトラックがいた。 ピタリと俺の後ろにくっついて煽ってる。 慌てて俺もスピードを上げて、引き離そうと思ったんだが、どんなにスピード出してもピタリと離れない。 何だよこいつ!と思ったが、トンネル... 続きを読む
森の塊
近所の神社でよく遊んだ頃の話。 ○○ヶ峰につづく山を背にして本殿が建っているのですが、脇に山に入る道があります。 踏み固められた道なので、人の手が入っていたのは間違いないです。 気にはなるけど、その道を奥まで制覇した者は居ませんでした。 夏休みのある日、鬼ごっこ的な遊びをしていました。 男の子が2人、その山道に隠れたらしいのです。 隠れると言っても境内から丸見えなので、かなり奥まで行ったのでしょう。 他の子がみんな見つかっても2人だけは見つからないので、全員で捜しました。 山道は境内から見える所までは行き... 続きを読む
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