これは今から13年前に起きた出来事です。 今ではあれが何だったのか分かりません。 幽霊であれば良いと願っています。 当時私は上京してきたばかりで右も左も分からない状態でした。 祖父からもらったぼろぼろの東京マップを手に、見知らぬ都会をさまよいました。 上京の理由は出稼ぎです。 地方で職にあぶれていた私は遠い親戚を頼って来たのでした。 「職は知らんが住む場所なら安く提供してやろう」 叔父にあたる其の人は電話でしか話したことも無く、まったくもって不安でした。 普通なら不慣れな土地です。 迎えにきてくれてもよさ... 続きを読む
心霊
許容範囲
2年ほど前の話。 その年の夏、俺は大小様々な不幸に見舞われていた。 仕事でありえないミスを連発させたり、交通事故を起こしたり、隣県に遊びに行って車にイタズラされた事もあった。 原因不明の体調不良で10キロ近く痩せた。 そして何より堪えたのは、父が癌で急逝したこと。 そんなこんなで 「お祓いでも受けてみようかな……」 なんて思ってもない独り言を呟くと、彼女(現在嫁)が 「そうしようよ!」 と強く勧めてきた。 本来自分は心霊番組があれば絶対見るくらいのオカルト大好き人間なんだけど、心霊現象自体には否定的(こう... 続きを読む
フルート
これは去年、オレが高1だったとき。オレには大学に通う姉がいて、その姉の友達(以下M)にまつわる話。Mは吹奏楽をやっていて、フルートがめちゃくちゃ上手かった。同じ東京の大学に通う姉とMは、休暇があると二人してオレの住んでいる栃木の実家まで遊びにきた。Mは人見知りするらしく、初め会った時(そのときはオレが姉のアパートに遊びに行った)にはほとんど会話がなかった。オレも自分が年下ということもあって、当時は敬語で挨拶する程度だったのだが、それから姉が実家に帰るごとにMを連れてきたので自然とオレもMと打ち解けて、そ... 続きを読む
山彦の夜
俺は従兄弟達の家に二度と行かない。 ちょうど去年の夏の話。 俺は従兄弟に誘われて、従兄弟の家に行った。 茨城県の山の奥深い所で、人の気配もなく田んぼがずらーっとならんでいた。 夏とは思えないほど涼しく、とても居心地の良い所だった。 従兄弟達とは昔から仲が良くて、小さい頃はしょっちゅう遊んでいた。 従兄弟は四人いて二人は仕事を探しに東京に行っていた。 あとの二人は父親の跡継ぎで農業をしていた。 そんな従兄弟の家に泊まっていたある日の夜、深夜友達とメールをしていて、そろそろ眠くなってふ... 続きを読む
飛ばされる
五年前の春、すごい強風の日があった。 灯油缶を入れる大型のケースが玄関の外にあって、一度飛ばされた事があるので、 確認する為に兄と二人で外に出た。 ケースは玄関から2メートルほど移動していて、道路まで出かかっていた。 俺が慌ててケースを止めて運ぼうとしていると、兄が空を見上げて一言。 「なんか飛んでるぞ」 見上げると、空を大勢の人間が風の向きに沿って飛んでいた。 強風で人間が飛ばされたのかと思ったが、それなら俺達も飛ばされてるはず。 二人でその光景を呆然と見ていると、人間と思って... 続きを読む
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