おかっぱの子

あれは俺が小学生に上がったばかりだから、もう20年以上昔の話だ。
この前の辻事件を書いてて思い出したが俺の住んでた村には結構そういった怪奇スポットがいくつかあった。
今回も少し長めです。

今回は夏に行われたお化け大会の時の恐怖体験ついて書いてみる。
場所は近くの神社。
そこはうっそうとした林の中にあり、昼間でも怖くて一人では近づきたくない場所だった。
ルールは簡単。
ひとりずつ本堂の奥にある祠の前に置いてある箱からゴムボールを1個持ってくるだけだ。

しかし小さかった俺には死ぬほど怖かった。
街灯は無いので真っ暗。
皆、懐中電灯を片手に震えながらボールを取ってきた。
奥の方では悲鳴が聞こえる。
上級生がお化けの役になって、下級生を驚かしているからだ。
中には怖くて途中で引き返してくる子もいた。
そういう子には上級生が一緒に行ってあげてボールを取ってきた。

いよいよ俺の番だ。
心臓が口から飛び出るくらいバクバクしている。
半ばヤケクソ状態で先へと進んだ。本堂までは50m位だったが本当に真っ暗だった。
緊張で懐中電灯が左右にブレる。と、俺の視界左横に何かが見えた。
人魂だ。ゆらゆらと俺に付いて飛んでいる。俺はまったく気にせず先へ進んだ。

前にもちょっと書いたが小さい頃の俺はそういうものが普通に見えていた。
なので人魂程度ではたいして驚かなかった。
ようやく本堂に着いた。
左の脇道から裏へ回る。
と、お化けの格好(狼男?)をした上級生が飛び出てきた。
ヒィ!あまりに突然だったので悲鳴を上げた。
人魂より人間の方が怖い。
俺は先へ進んだ。

次に出てきたのは鹿のお面をかぶった鹿男だった。
ヒヒーンと鳴いている。俺は無視するように祠へ向かうと箱からボールを取った。
と、頭上から白い服を着た人形が垂れ下がってきた。
さすがに、これには腰を抜かした。
ブランブランと揺れている人形をしばらく見ていたが、ハッと我に返り本堂の逆サイドから帰ろうとした。

あまりの怖さに泣きべそをかきながら走った。
そして本堂の脇を抜ける時、誰かが本堂の外廊下に座っているのが見えた。
お化け役の上級生かと思ったが体は俺と同じくらいの大きさだ。
着物を着て、おかっぱ頭。女の子のようだった。
手には赤い毬?を持っていた。
『先に行った子かな? 何でこんな所に座ってんだ?』
俺は無視してその子の前を走り抜け、そのままスタート地点まで戻った。
俺はゼェゼェ言いながら係の子にボールを渡した。
「あれ? 何だこれ? おい、こんなの入れてあったか?」
俺は何のこっちゃ? と思ったが、渡したボールを見て愕然とした。
それはボールではなく毬だった。
それもあの子が持っていたのと同じ赤い毬だった。
俺は確かにあの時、箱から黄色いゴムボールを取り出したはずだ。
それがいつの間にか毬に替わっていた。

俺は訳がわからなかったが係の子達はまぁいいかと言って収まった。
ほどなくして全員の順番が終わり、お化け大会は終わった。
もちろん最後に集合した子供たちの中に、あのおかっぱの子はいなかった。
翌日、あの子がどうしても気になった俺は友達を誘って神社に行ってみた。
今考えれば、やめておけばよかったと後悔してる。

夕方だがまだ明るく友達もいたので全然怖くなかった。
本堂の周りを一周してみたが、これといって変わったものはなかった。
付き合ってくれた友達は、ひ~ちゃんというあだ名で彼は昨夜、ここで人魂ではなく大きなUFOが飛んでゆくのを見たそうだ。
人魂もUFOも同じ周波数帯にいるのか?
俺は子どもながらに、ふ~んと思った。

二人で神社の周りをアレコレと散策していると、ビシッ! という何かが突っ張るような音がした。
ん?何だ今の?
音はひ~ちゃんにも聞こえたようだった。
視線を回してみるが誰もいない。俺は祠のあたりを調べたが特に何も異常はなかった。
と、本堂の正面を調べに行ったひ~ちゃんから俺を呼ぶ声がする。
正面に行くと彼は本堂の正面の戸から中を覗いていた。
「どした?」
「シーッ……あれ見てみろよ」
俺も同じように格子の隙間から中を覗いた。
中には大きな神棚がありご神体祭られている(フタが閉じていたのでご神体は見えなかったが)。
と、その神棚に向かって小さい子供が座っているのが見えた。
咄嗟に昨日の子だ! と気がついた。
しかし、どうやって中に入ったのか、鍵は外からかけられているではないか。
「何だあの子? どこんちの子だ?」
何も知らないひ~ちゃんは、あの子が近所の子だと思ったらしい。
俺は必死に昨日のことを説明しようとしたが、なぜか声が出ない。
それどころか体が思うように動かなくなっていた。
つまんないから帰ろうぜ~と彼は言うと俺を置いてさっさと鳥居(昨日の大会の出発地点)に向かって歩き始めた。
俺は(ま、まってくれよ・・・)と心の中で叫んだが、まったく気づく様子もなく行ってしまった。
と、そこにビシィッ! という音が聞こえた。
さっきより大きい音だ。
目線を本堂内に戻すと、あの子が両手で何かをしているようだった。
ビシィッ! それは両手で何かを引っ張った際に出る音だと気づいた。
と、その時おかっぱの子がこっちに振り向いた。
顔がない。
えっ!?
昨日は暗く、うつむいてたから気がつかなかったのか……!?
俺は完全にパニックになりかけていたが、とにかく鳥居のほうへ……この神社の敷地から外に出なくては! と思い、うまく動かなくなった体を引きずるように本堂の階段を降り、庭の石畳を鳥居方向へと進んだ。
ひ~ちゃんはかなり先まで行ってしまっている。と、本堂の戸が開く音が聞こえた。
ギィイィィ……
俺は振り返らなかった。
いや、恐ろしさで振り返れなかったんだと思う。
ズリッ……ズリッ……重くなった足を引きずりながら、おかぁちゃん、おかぁちゃん、と泣きながら叫んだ。
一緒にあそぼ……
確かに聞こえた。
おかっぱの子が言ったんだと思う。
正確には聞こえたというか心に響いたというか。
しかし恐怖でいっぱいの俺は、とにかく逃げたい一心で先へ進んだ。
いや、これも正確には進んでいなかった。
俺は見てしまった。
自分の足元を。
重いと感じていた原因を見てしまった。
俺の両足には真っ赤な糸? がフォークで絡め取ったパスタのようにぐるんぐるんに巻きついていた。
えっ!? 何これ! その糸はおかっぱの子から伸びていて俺の足をがんじがらめにしていた。
そしてさっきから聞こえてたビシッ! という音はその子が赤い糸を引っ張ってる音だったのだ。
俺は「もうダメだ……」と思い諦めた。
明らかに小学1年生に出来る範疇を越えていた。
ここで一緒にあそぶんだよ……ずっと一緒に……
そう聞こえたと同時に、ズルズルと本堂の中へ引っ張られてゆく感じがした。
俺は仰向けに倒れ、空を見ていた。フフフッ・・・フフフッ・・・というおかっぱの子の笑い声と引きずられる音だけが響いた。
まるでここだけ時間が止まっているかのようだった。
俺は諦めた。
怖さより、もうこれで親や友達に会えなくなることが悲しかった。
そして本堂の中に体が入る瞬間、何かがひっくり返った。
バサァァァッ
ひっくり返ったのは俺だった。
視線が前後上下左右に揺れまくった。
一体、何が起こっているのかわからなかった。
気がつけば本堂を上から見下ろしている感じだった。
えっ!?俺は足が軽くなったのがわかった。何だこれ!?
と思う間もなく、急降下してそのまま鳥居がある入口のほうまで一気に飛んでいった。
あろうことかすぐ目の前には、ひ~ちゃんの背中が見える。
俺はそのまま映画のスローモーションのようにゆっくりと地面に足をつけた。
瞬間、時間の流れが正常に流れ始めたのがわかった。俺は振り返ろうとした
が、地面の底から響いてくるようなおぞましい声が聞こえたので固まった。
おぉぉのれぇぇぇ……邪魔をしおってぇぇぇぇ……
何のことかわからなかった。
俺は振り返らずそのまま鳥居の外まで出たほう
がいいと思い、ひ~ちゃんと走った。
無事、外へ出るとひ~ちゃんはずっと俺がそばに付いてきてると感じてたと言った。
俺は起こった事を彼に話した。
彼はふ~んと鼻くそをほじりながら聞いていたが、こんなことを言った。
じゃぁさ、それって誰かがおまえを助けてくれたのかもな。
え? 誰かって誰だ?

日が沈みかけていた。
俺は泣きべそをかきながら家に帰り、お袋に話した。
お袋は
「それは天狗様が守ってくれたんだね」
と言い、おかっぱの子については、あそこの神社の裏には無縁仏のお墓があるから、たぶんそこに埋まっとる子なんじゃないかと言っていた。
翌日、俺とお袋はお菓子とおもちゃを持って、その無縁仏のお墓にお供えした。
ゴムボールも3個置いてきた。
たぶん鞠遊びがしたかったんだろうな、と思ったからだ。

それ以降、友達とその神社へはたまに遊びに行ったが、何事も起こらなかった。
ただ、たまに近所の人があそこでボールが跳ねる音がした、と言ってることが何度かあった。
今回の事件では俺は天狗の姿を見ていない。
でも俺が3歳くらいの時、じつは自宅で天狗を見ているんだ。
その時は本当に怖かった。
3際の頃の記憶で覚えているのなんて、その天狗のことと釣堀に落っこちたことだけだ。
それは機会があったらまた書くことにする。
おしまい。

194 本当にあった怖い名無し 2010/02/25(木) 21:59:42 ID:0/ZxkvvA0

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  • 名無しさん

    面白いとは思うんだけど文体が恋空っぽくて目が滑った

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