僕が大学生だった頃、バイト先だったバーのお客さんの話です。 Kさんは、その店にわりとよく来るお客さんで、当時20代後半の会社員。 僕と同じ茨城出身の人でした。 ちょうど今頃の季節で“蛍”が話題にのぼり、 「僕の地元は2、3年前までいっぱいいましたよ」 「俺の実家の近くじゃ、全然見れないんだよな。いいなぁ、蛍。見てえなぁ」 と話をしたのです。 一月ほど後。 久しぶりに店に顔を出したKさんが、他のお客さんがひけた頃合いをみて、 「笑ってくれてもいいんだけど……」 といって、ポツポツと淡々とマスターと僕に語りは... 続きを読む
山
森の塊
近所の神社でよく遊んだ頃の話。 ○○ヶ峰につづく山を背にして本殿が建っているのですが、脇に山に入る道があります。 踏み固められた道なので、人の手が入っていたのは間違いないです。 気にはなるけど、その道を奥まで制覇した者は居ませんでした。 夏休みのある日、鬼ごっこ的な遊びをしていました。 男の子が2人、その山道に隠れたらしいのです。 隠れると言っても境内から丸見えなので、かなり奥まで行ったのでしょう。 他の子がみんな見つかっても2人だけは見つからないので、全員で捜しました。 山道は境内から見える所までは行き... 続きを読む
赤い川
そういえば、ひとつ高野山での体験談を思い出した。 漏れが高野山に住んでいた時、こんな噂話を聞いた。 曰く 「昔、坊主専用の廓が山のどこかにあった」 「その廓は終戦後取り潰されて廃墟になったが、今でも形を保っている」 「そこはとんでもなくヤバイところで、何が出るかは知らないが、行ったら正気では帰って来れない」 と、ものすごく好奇心をそそる内容。 当時寮生だった漏れは、ある夏の休日に寮の後輩を無理矢理引き連れて噂の廃墟へと向かったのさ。 と言っても廃墟の場所は正確にわからないから、ちょっとしたピクニック気分で... 続きを読む
糸
もう十年以上前の、ちょうどこれぐらいの時期の話です。 当時小学生だった私と兄、友人数人で地域で有名な公園によく遊びに行ってました。 その公園は位置的に私の通う小学校と、他校との真ん中にあるため、他校の生徒であろうと仲良く一緒に遊んでいました。 夏休みのある日のこと。 市民プールの帰りにその公園により、お弁当を食べ終えた頃。 他校の学生も数人集まり始め、彼らと探検ごっこをすることになりました。 公園の真ん中には川が通っており、その奥は鬱蒼とした森となっています。 川と言っても横幅はあるのですが水はあまり流れ... 続きを読む
山での遭遇したもの
私の父親は山好きです。 当然、山関連の友人も多く、私も山へ行く度にそうした方々と話をしました。 そして、その友人の中にAさんという方が居ます。 私が彼と最後に話をしたのは高校生の頃です。 高校卒業後、進学の関係で地元を離れてからは一度も会っていない上、結構な年齢に達していた筈なので今は亡くなってしまっているかも知れません。 Aさんは県内でも山深い山村の出身で、実に色々な話を知っていました。 私にも沢山の話を教えてくれましたが、その中でも印象深い話をさせて頂こうと思います。 Aさんが少年の頃(戦前)、罠を仕... 続きを読む
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