今は亡き祖父の昔話。祖父と父が混同するので、祖父はAと表する。
Aは村人全員家族っていうような山の集落で育った。夏場は回りの村や町からくる行商などもいるが、冬になると道も雪に埋れてしまう。Aの一族は元来マタギの家系で、冬の間は村のみんなが、祖父の家族が取ってくる動物で食事の大半を賄っていた。その代わりAの家は栄えて、夏の間は遊んで暮らしていたそうだ。
Aが小さい頃は兄弟や親が取ってくる動物に何も疑問も持たなかったが、歳を取るごとにこう思ったそうだ。「こんなに安定してすごい量が取れるのはおかし... 続きを読む
秋田・岩手の県境の山里に住む、元マタギの老人の話が怖くはないが印象的だったので書く。
その老人は昔イワナ釣りの名人で、猟に出ない日は毎日釣りをするほど釣りが好きだったそうだ。
しかし、今は全く釣りをしなくなったのだという。これには理由があった。
あるとき、大きな淵で片目が潰れた40センチを優に超える大イワナを掛けたが、手元まであと少しというところで糸を切られてしまった。
マタギの老人は地団駄踏んで、いつか仕留めてやると心に誓ったそうだ。
季節は流れ、夏になった。その年は天候が不順の年で、郷では近... 続きを読む
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