2人組の男女と甲冑集団

次にお話させて頂くのも、引き続きAさんの体験談です。
これも戦前の体験だそうですが、この話をしていた時のAさんはしたたかに酔っていました。
ですので、実際の体験とは異なる部分が入っているかも知れません。
前回の話から時は流れ、Aさんは17,8歳位になっていました。

そんなAさん。
ある日用事があって山道を歩いていました。
昔の人というのは凄いもので、峠の5つや6つは休み無しでも平気で歩いたそうです。
初夏の日差しを浴びながら、もうひと踏ん張りで峠の頂上だ…と考えていたのですが、その時、妙な音が聞こえてきました。
何やら後ろが騒がしい……足を止めて後ろを振り返りました。
音からすると、誰かがこちらへ駆けてくるようです。
ガシャ、ガシャ、ガシャ……何かがぶつかり合うような音……何の音だろう?
Aさんは気にせずに先を急ごうと思ったのですが、音が気になってしょうがありません。
鍋釜を背負って夜逃げでもしてるのか?でも今は昼間だから夜逃げじゃねぇよなぁ……
暢気な想像をしていたAさんの前に、その音源の主が姿を現しました。

「なんだ、ありゃ……」
思わず呟くAさん。
無理もありません。
彼の目の前に現れたのは、全身を甲冑に身を包んだ男だったのです。
外見を見る限り、Aさんとそれ程違わない年齢……いや、あどけなさが残っているので、1歳か2歳年下かも知れない……の男性が、やはり同い年ぐらいの女性の手を引きながら、こちらへ駆けてきます。
「そんなに急いで、何処へ行く?」
Aさんは声を掛けましたが、2人はその声を無視して、と言うよりまるで聞こえない感じで走ってきます。

やがて、Aさんの前を2人が通過しました。
「人を無視して、なんだあいつ等は。女連れて歩いてるからって調子乗りやがって」
少々嫉妬が混じった独り言と共に2人を見送ったAさん。
と思った瞬間、今度は凄まじい速さで、数人の集団がAさんを追い抜いていきました。
「危ねぇな、コノヤロー!」
突然の事にビックリしてと叫ぼうとしたAさんですが、その集団の姿を見て再度ビックリしました。
先程の男性と同じく、全員が甲冑を着込んでいます。手には日本刀だの槍だの、物騒な物も持ってます。
「物騒な連中だなぁ。あんな物で何をするつもりだ、オイ」
少々好奇心が出てきたAさんは、峠の頂上まで一気に駆け上がりました。
そして下を見下ろします。頂上からは真っ直ぐな一本道が続いてます。
そこからは、さっきの2人組の男女、それに甲冑集団も見えました。

集団は男女を取り囲んでいました。
そして、槍や刀を2人に向けています。
「尋常じゃないぞ、これは……一体何が起きたんだ?」
そう呟いた瞬間、槍を持った1人が女性を一突き。
「あっ! やりやがった!」
思わず叫ぶAさん。
が、包囲した集団は情け容赦なく、今度は男性の方に槍や刀で襲い掛かります。
男性は僅かに抵抗したようですが、これまた槍や刀でメッタ刺しにされ、斃れてしまいました。
寄ってたかって酷い事しやがる!
そう思ったものの、Aさんとて安心はできません。
殺害現場を見た以上、自分だって殺されるかも知れない。
こんな山の中じゃ助けも呼べない。
が、Aさんの心配とは裏腹に、誰もAさんの事を気にしてる様子はありませんでした。
彼等は既に虫の息となった2人を、尚も槍や刀で刺し続け……最後に、なんと首を切り落としてしまいました。
昼間の惨事を目の当たりにして、呆然とするAさん。

やがて、その集団は首を乱暴に掴むと、こちらへ引き返してきます。
逃げないと……そうは思うものの、体が動きません。
甲冑集団の人々は、顔や鎧に飛び散った血を拭こうともせず、こちらへ歩いてきます。

やがて、Aさんの目の前まで来た彼等は、Aさんには目もくれず、さっさと峠を下って行ってしまいました。
何だったんだ、あいつ等は……そんな事より警察だ、警察に知らせないと!
そう思い直し、再び峠道を見下ろします。しかし……

「あれ? あの2人はどこへ消えた?!」
ついさっき、集団に寄ってたかって殺されて、首を刎ねられた筈の2人の遺体が消えていました。
急いで峠を下りて、先程の惨事が起きたであろう場所に駆け寄ります。
現場には死体はおろか、血の一滴も残っていません。
「首の無い奴が1人で歩き回る筈は無い。それに、さっきの奴等は首しか持ってなかった。じゃあ、俺が見たのは一体……」

この惨事は、夜中や明け方ではなく、白昼堂々と行われました。
また、甲冑の音を覗いては走る音も叫び声も一切しなかったそうです。
この不可解な出来事に関しては、Aさんなりに結論を出しています。
彼が言うには、村からそう遠くない所に、小さな城跡がある。
ある時、何らかの理由で、城から女性を連れて脱走した者が居るのではないか。
追撃隊まで組んで追いかける程だから、何か重要な情報でも持ってたのだろう。
もしくは、逃げられては困る人物だったのかも知れない。
そして、数百年の時を超えて、その時の光景が何度も繰り返されているのではないか。
それをたまたま、Aさんが目撃してしまった……。

上の件については、私も独自に調べました。
ただ、ネット上で調べただけなので限界があります。
まず、Aさんの言う「村からそう遠くない」というのは、人それぞれだと思います。
私にとっては、結構遠いと思える距離でした。
また、城跡にしても、青葉城址や久保田城址のように立派なものではなく、本当に小さなもので、県内の田舎に小山(と、言うよりは丘)がポツンとある感じです。
城跡に関わる歴代城主やその一族なのですが、その末裔は今でも居ますので、ここで出すのは控えさせて頂きたいと思います。

それにしても、この残酷な光景は、今でも繰り返されているのでしょうか。

656 562 皇紀2665/04/01(金) 01:02:02 ID:shfE6z7E0

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