その日、僕は友人Sの運転する車に乗って、県境の山奥にあるという廃村に向かっていた。
メンバーは三人で、いつも通り。
運転手がSで助手席に僕。
もう一人、後部座席を占領しているのがKだ。
僕らが街を出たのは午前十時頃で、途中で昼食休憩をはさみ今は二時過ぎ。
目的の廃村までは、あと一時間といったところだった。
車は現在、川沿いのなだらかな上り坂を、ゆったりとしたペースで上っている。
僕は開いていた地図に再び目を落とす。
これから行く廃村はもはや地図に載っておらず、赤ペンでぐりぐりと印がつけられている場所が僕ら... 続きを読む
俺が小学1、2年生くらいだった頃、通学路で普段通る、地下道の天井に「かっぱの手」と呼ばれる大きなシミがあった。
それは見ると確かに4本指の手のような形をしていて、両端が少し短い。
それが河童の手の特徴なのか、単にそれっぽく見えるというだけなのかよく解らなかったが、幼心に結構不気味だと思っていた。
そのかっぱの手には、傘で突くと呪われるやら祟られるという噂話があって、地元の子供の間ではそこそこ有名な名所だった。
雨が降ったある日の下校中、いつもの4人グループでいつものようにその地下道を通ると、中でも特に体格... 続きを読む
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