古い木箱

父から聞いた漁村の話です。 戦争中、紀元二千六百年記念行事の際に、漁村の神社を新しくするという事業が行われたそうです。 そのために、神社の宝物殿のものを他の場所に移す作業が必要になりました。 たくさんの人間がそれに関わるというのは、なにかと都合が悪い(盗まれたりする)というので、村の若者(当時は子沢山だった)のなかから三名の二十歳まえの男が選ばれたそうです。 そのうちの一人から父が聞いた話なのですが、宝物を移動させるのですが、それほど多くなく、1つ、古い木箱(船の荷造りのために作るような箱)が特に重要だと... 続きを読む

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箱の中の少女

十年以上前の話です。当時、私の祖父は腕の良い建具職人でした。私はそんな祖父の仕事ぶりを眺めるのが好きで、よく仕事場に出入りしていました。 その日、私はいつものように祖父の家を訪れ、落ちている木ぎれを拾って遊んでいました。目の前で、祖父が作業台の前に座って黙々と仕事をしています。ごつい手が器用に動いて木を削ったり部品同士を組み合わせたり、その技の冴えに私はしばし遊びの手を止めて見とれていました。 しばらくして、妙なものに気づきました。祖父の背後の壁に、使い込まれて黒光りする木の板が何枚か立てか... 続きを読む

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